BenQ「XL2410T」の表示遅延とAMAの効果を検証

 発売から約1年近く経ち、購入しやすい価格に落ち着いた感のあるBenQのネイティブ120Hz入力モニタ「XL2410T」。遅延を調べるといいつつ半年以上も記事を寝かせてしまい、そのままデータベースの無駄容量となりそうでしたが、折角なのでしっかり検証しつつ書ききりました(ほんと今さらなのですが)。

この記事を書くにあたり、それなりに確証が持てる結果とクローンモードの挙動を学ぶことができ、自分にとっては有意義なテストでした。が、購入した分岐ケーブルで「つかまされた」り、そのお陰でデュアルリンクモード時にシングルリンク入力するとどうなるか判明したりと、イレギュラーなことから得た情報もまじえながら表示遅延とAMAの効果についてお伝えします。

表示遅延をCRTと比較する

 XL2410Tの表示遅延時間を計測するにあたり、一番ベストなのは「同じ出力信号を分配表示する」に尽きます。XL2410Tはゲーマー向けに開発された”低遅延・ネイティブ120Hz入力/表示”を売りとした液晶モニタであり、比較対象は他モデルの液晶モニタでなく、表示遅延がほぼ無いに近い”CRT”にしました。なにしろ「CRTレベルの低遅延」を目標に掲げて開発されたモニタなのですから。



↑遅延計測の接続図。PCのビデオカードはAMDのRADEON HD 5670。



↑上が正常表示、下がシングルリンクケーブルでフルHD・120Hz伝送した場合の表示。水平解像度が半分となり、「ケーブルが不正です。付属のデュアルリンクDVIケーブルを使ってね」という旨の警告も表示される。



↑Refresh Rate Multitoolの表示サンプルgif画像を拝借(クリックで等倍アニメーション)。同様の表示ができる120fpsの動画を作成。実際には120fpsで高速に表示される。白い帯が下まで表示し終えると、そのフレームの表示が完了となり、1フレーム進む毎に1,2,3……10,1,2,3……列と右方向にシフトを繰り返します。

幸いにも、私の自宅にはPC用のCRTモニタが残っており、CRT側はアナログRGBでしか受けられないため、アナログRGB信号を分配器でCRTとXL2410Tに入力し比較計測する方法を採用しました。

 じつは、こちらのDVI-I→DVI-D・アナログRGB分岐ケーブルを購入して同時出力できないか試したのですが、検証に用いたRADEON HD 5670のDVI-I出力はDVI-DとアナログRGBが排他であり、同時出力は無理という結果に。しかも、コネクタのピンだけ見るとデュアルリンク伝送対応に見えますが、シングルリンク伝送しかできませんでした(デュアルリンク部分のピン間が結線されていないため、フルHDで無理矢理120Hz(デュアルリンク)伝送をすると960x1080相当の残念映像が表示される)。

 クローン表示については、プライマリに設定した出力がV-syncフリップするため表示が遅れる傾向にあり、セカンダリはティアリングが発生するものの表示が若干早い特徴を持ちます(V-sunc待ちのフリップをしない分だけ即時描画できるため速い)。さらに、それぞれの映像出力はクロックジェネレータが個別に非同期で動作しているため、大雑把に120Hzといってもほんの僅かなクロック誤差から表示タイミング・速度が異なるという欠点があり、これはLCD Delay Checkerの作者さんがNVIDIAのビデオカードで調べた結果と同様のものです。今のところAMD・NVIDIAともにクローンモードは表示差を測る精度として不向きであることがわかりました。

 計測ですが、横方向に10分割した縦ラインに1本の白ラインを表示して1フレーム毎に左から右へシフトさせていく120fpsの動画を作り、それを再生表示しながらカメラで撮影する方法を採りました。カメラのシャッタースピードは1フレームの表示時間に一番近い1/125秒(手持ちのカメラでは1/120秒設定不可)。

 遅延時間は、XL2410TとCRTが「表示したライン差」から導き出す方法で、1フレーム以下の表示差を白いラインの表示幅(縦幅)で確認できるメリットがあります。これらのアイディアは「RefreshRateMultitool」から拝借しましたが、このツールは当方の環境だとV-syncに同期した書き換えができないため、ティアリングの懸念があり、今回は同様の120fps動画を作ってハードウェアオーバーレイによるV-sync同期表示をしました。出力はアナログRGB出力で分配器を通し、CRTとXL2410Tに同一信号を入力しています(レンダリングについては、EVRを使う手もあるのですが、動画の解像度とフレームレートが高すぎてDXVAによるデコードができなかった)。



↑左がCRT「HM204D」、右がXL2410T。両モニタの色が異なるのは表示モード(色温度等)やデバイス特性に依るもの。画質検証ではないのでご了承を。


↑解像度1280x960の120Hz出力を分配器で両モニタへ。CRTのほうは1920x1080で120Hz表示が可能なものの、XL2410Tのアナログ入力がH-sync 83KHz付近までしか受け付けないため、この解像度で妥協。


↑XL2410Tのアナログ入力情報。分配器によりCRTと同様の信号を入力。表示はXL2410Tのスケーラを使いフルスクリーン表示。スケーラがハードウェア実装ということもあり、フルスクリーン表示での遅延は殆ど確認できなかった(あっても数ライン程度と思われる)。
表示遅延はインスタントモード有効時で約5.8ミリ秒

液晶モニタ・テレビの表示遅延は、モニタ内部の映像処理に費やす「処理遅延」と液晶パネルの「応答速度」に影響され、概ね 表示遅延≒処理遅延+応答速度 となります。なお、画像はクリックで原寸表示できます。



■インスタントモードOFF
CRTが6フレームまでほぼ到達しているのに対し、XL2410Tは5フレーム目を表示し始めたばかりで約4.1フレームあたり。CRTとの差は約2フレーム弱となりますが、60Hz入力/表示の1フレーム(2/120=1/60)遅延とほぼ同等の約16msであるため、インスタントモードOFFでも表示遅延は意外に小さい。

 



■インスタントモードON
インスタントモードONでは、驚異的な低遅延を発揮。CRTが約4.5フレームあたりを表示した時点で、XL2410Tも4フレーム目を完了しています。液晶の欠点である応答速度が足を引っ張り、素子が反応しきれていないものの、ここまで表示できていれば4.0フレーム判定しても良さそうですが、応答途中である点を考慮して若干遅く3.8フレームとしました。その差は約0.7フレームであり、表示遅延時間は約5.8ms。多くの60Hz入力モニタ・テレビで換算すると、約0.35フレーム遅延という素晴らしい値(応答速度を抜きにすれば、処理遅延は約0.2フレーム程度)。

一方で、先に書いたとおり液晶パネルの応答速度が遅いことを露呈するテストとなり、液晶素子が反応してから完全に白になるまで(または白から黒になるまで)グラデーションが見え、そのグラデーション長が俗にいう液晶の応答速度となります。グラデーション長は約0.5フレーム+少々見受けられることから、XL2410TのTNパネルは白⇔黒間で約5ms近くある計算(これは公称スペックどおり)となり、モニタ内部の映像処理ロジックをこれ以上高速化しても、液晶パネルの応答速度が足枷となる事を物語っています(これらの欠点を視覚上で改善する技術として、現在は倍速リフレッシュによる黒挿入・バックライトコントロールがポピュラー)。

AMAはBenQ製のオーバードライブ機能

 液晶パネルの応答特性を改善する方法として幅広く用いられているオーバードライブ(BenQの機能名称:AMA)は、電圧変化時のエッジを極端に持ち上げたり下げたりすることで、瞬時的に大きめの電圧差を生み出して素子の応答速度を早める効果があります。

ゆえに、動きで輝度が上がる輪郭周辺ではオーバーシュートによる明るい擬似輪郭、輝度が下がる部分ではアンダーシュートによる黒い擬似輪郭が発生します。以下で、その効果を確認してみましょう。

オーバードライブの効果にはこのような映像を用意しました。グレーの背景に黒(RGB:0)~白(RGB:255)のグラデーションで作った横2×縦255の縦ラインが、左から右へ120fpsで動く映像です(撮影速度は1/250)。オーバードライブが働くと、縦ラインの白部分の後ろ(左側)には黒いアンダーシュート、縦ラインの黒部分の後ろ(左側)には白いオーバーシュートが出ます。



■AMAオフ
縦ラインの左側(移動方向の後ろ側)に応答の鈍さから来る1フレーム前の残像が見えます。縦ラインの中央(輝度のクロスオーバー付近)は背景の輝度に近いため波形変化が極少なく、残像がハッキリと見えるレベルではありませんが、輝度が引きずられるような残像感は知覚できます。

 



■AMAオン
右へ動いている縦ラインの左側(輝度が変化した1フレーム前の部分)にだけオーバードライブによるシュートが見事に出ており、黒からグレーに変化する(輝度が立ち上がる)ポイントはオーバーシュートによる白い残像ライン、白からグレーに変化する(輝度が下がる)ポイントにはアンダーシュートによる黒い残像ラインがハッキリ見えます。

また、縦ラインの中央付近では背景との輝度差が小さいため、AMAが有効であってもオーバードライブが掛からないようになっており、グレー背景に近い輝度のクロスオーバー周辺で急にシュートが出ない領域も確認できました。おそらく、ある一定の輝度差(閾値)を検出して素子ごとに印加電圧を制御していると思われます。

AMAを含む多くのオーバードライブは、液晶の応答速度を若干改善できる反面、オーバーシュート・アンダーシュートによる逆輝度の擬似輪郭が残像のように一瞬見えてしまうデメリットもあり、このテストのような単色に近い背景でテキストや単調な図形がx,y方向に動くと意外に目立ちます(とくにゲーマーだと動きに敏感な人が多いと思うので、気になる人がそれなりにいると考えられる)。そのため、AMA有効・無効の判断は、「長く見える普通の残像」と「オーバー・アンダーシュートによる逆輝度の残像感」、どちらを取るかという選択になるでしょう。

なお、AMA有効時の遅延は確認できず、現フレームの映像表示は前フレームの比較用バッファと参照しつつパネル素子をコントロールしていると思われ、そのためAMA有効時でも表示に至る遅延がほぼ発生しないのではないか、と私は予想します。

ゲーマーのシビアな遅延知覚とその要求に応えうるスペック

 とくにゲーマーは、自分の操作感と視覚から得る表示差の感度が鋭いため、自分の操作感に対し、実際の表示タイミングが異なると敏感に違和感を覚えます。要は、自分がまったく操作せず視覚情報だけで1~2フレームの表示遅延を認識するのは難しく、あくまで自分が操作した結果と表示・判定タイミングの差を感覚で読み取ります(”操作⇔表示された映像が目に飛び込む”を互いに一瞬でフィードバックし、その差を感じたときに表示遅延として認識する)。

よく「重い」とか「もっさり」と表現されるのは、操作した結果が表示に反映されるまで遅延がある場合の感覚で、神経が研ぎ澄まされているゲーマーほど小さな遅延時間でも「あれ?」と感じるものです。もちろん、遅延要素はモニタだけでないため、操作レスポンスが悪いからといってモニタのせいだとは決めつけられません(ここではモニタの表示遅延に限定して検証しているため、入力デバイスやゲーム・PC機器の処理、表示方法による遅延要素の話は割愛)。

 そういう意味では、XL2410Tのインスタントモードにおける表示遅延時間(処理遅延+液晶の応答速度)が約5.8msというのは、ゲーマー向けモニタとしてほぼ満足行く値といえるのではないでしょうか。CRTと液晶パネルの表示特性差があるにせよ、「打倒CRT」的な目標を掲げたモニタとしては恥ずかしくないデキだと私は評価しました。

また、ネイティブな120Hz入力/表示モニタは動画を表示するうえでも動きのリフレッシュタイミングにおいて効果絶大なのですが、その事についてはいずれ別の機会に書きたいと思います。

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