OLED(有機EL) パネルのフレキシビリティを利用した Bendable(曲げられる)モニタがいよいよ製品化されそうで、ゲーミングパーツに力を入れている CORSAIR がまず名乗りを上げた。

OLED の圧倒的なコントラスト比とマイクロ秒オーダーの高速な応答速度、ピクセル単位での発光特性による真の HDR 表現を引っ提げ、45インチ UWQHD 解像度 / 最大 240Hz の VRR (*1) 対応をベースに、フラット ~ 800R の曲率可変を実現している。

 

XENEON FLEX 45WQHD240 OLED UltraWide Gaming Display
https://www.corsair.com/us/en/xeneon-flex-bendable-ultra-wide-gaming-display

 

XENEON は……「ゼネオン」と読めばいいのか、おそらくキセノン(xenon)の Xe とネオン(neon)の語源を繋げた「未知なる新しさ」みたいな意味合いの造語なのかな。や、わかりませんけど。

CORSAIR Reveals Revolutionary 45in Bendable OLED Gaming Monitor

 解像度は UWQHD(3440x1440) で、パネル屋はこれを WQHD と表記することが多いけど、約 21 : 9 アスペクト比のウルトラワイドタイプ。ただ、UWQHD で 45 インチもあるため、大きく広い反面ピクセル密度が非常に低く、83 ppi ほどしかない。

これは 27 インチのフルHD(1920x1080)パネルのピクセル密度に近く、ぶっちゃけかなり荒いので、視力の良い人ほどモニタとの距離を離さないと画素のドット感丸見えだろうし、そこが個人的にはマイナス点かな。

UWQHD でリフレッシュレート 240Hz は、RGB 各 10bit 色深度でも伝送帯域的に HDMI 2.1 で足りるので、おそらくは HDMI 2.1 でのサポートになりそう。

そろそろ DP 2.0 対応の声も聞こえそうではあるけど、今秋~今冬リリース予定の次世代 GPU (NVIDIA の RTX40 シリーズや AMD の RX7000 シリーズ)で DP 2.0 実装か? みたいな感じではあるので、認証の遅れも相まって DP 2.0 対応モニタのリリースが本格化するのは来年以降かなと。DP 1.4 でも DSC (Display Stream Compression) を使えば UWQHD で 240Hz 伝送できるだろうけど……。

ベンダブル OLED モニタのプロトタイプ

 OLED パネルの特徴を活かしたものとして、Galaxy Fold や 同 Z Flip 系のような折りたたみができるスマホは既に製品化されているけれど、XENEON FLEX 45WQHD240 は ”折る” ではなく 「曲げてパネルの曲率を自由に設定できる」 という従来のモニタでは実現できなかった理想を叶えようとしているのが注目点。

 使用する OLED パネルは LG 製と明記されているので、サブピクセル構成は WRGB 方式の可能性が高い。ほぼ同時期に、LG が「45GR95QE」という 45インチ/UWQHD/曲率800R固定で最大リフレッシュレート240Hzのモニタを発表しているので、パネルとスケーラー自体はこれと同等または近いものであると考えられる。

LG UltraGear Debuts 240Hz Curved OLED Gaming Monitor at IFA 2022 | LG NEWSROOM
https://www.lgnewsroom.com/2022/08/lg-ultragear-debuts-240hz-curved-oled-gaming-monitor-at-ifa-2022/

 

 ちなみに、LG は去年開催された CES2021 で 48インチ/ベンダブル OLED モニタのプロトタイプを出展していて、こちらのほうは電動でフラット~1000R のスムースな曲率可変を実現していた。

このベンダブル OLED パネルには「OLED EX」というブランド名が付けられており、"EX" には経験(Exprience)、拡張(Expansion)、特別(Extra)といった意味が込められているという。

[Game Zone] LG Display 48” Bendable OLED LG Display

パネル曲率を自由に変えられる意味

 端的には「個々の好みや用途に合わせて最適なパネル曲率を設定できる」に尽きる。

例えば──

  • 仕事ではフラット、ゲームで遊ぶときは湾曲させる
  • アニメや映画などの映像作品を楽しむときは視聴距離を考慮して適切な曲率を設定する
     ex. モニタから1.5メートル離れるなら 1500R など
  • ゲームを楽しむにも 2D グラやレトロ系はフラット、3D 系のゲームは没入感を高めるため 1000R に
  • OLED モニタは欲しいが所望の曲率モデルがないため自分で好みの曲率を設定

このように、コンテンツの性質による表現の違い、個々の好みの多様性といった様々なニーズを自由な曲率可変で満たせる機能は「できるなら望まれていた」要素のひとつではある。

買いたいかというと少し考えてしまう

 一番気にかかるのは、先にも書いたように UWQHD 解像度で 45 インチサイズのパネルであるため、物理的に大きく画素密度が非常に低い点。多くの UWQHD モニタは 34 インチが主流である(27インチの WQHD(2560x1440) モニタと比較して画素密度がほぼ同じなので、縦の解像度と物理的サイズそのままに横へのみ画角が広がる)ため、27インチの WQHD モニタと34インチの UWQHD モニタをマルチ構成で並べても、PC のテキストフォントやウィンドウなどのサイズ・UI スケールが同じく見え、違和感が出にくい。

これがいきなり45インチともなると、物理的な大きさだけでなく見た目のスケールが変わり、画素も荒く見えるため、人を選ぶ感は否めない。

個人的には「このベンダブル OLED モニタが34インチサイズだったらなぁ」という想いしかなかったけれど、大きさと解像度のバランスが気にならないなら曲率を変えられる恩恵はあるので、興味のある人は同製品の情報を追いかけてみてはいかがでしょうか。

 将来的には、PC 上の起動プロセスに連動して設定した曲率に自動変更する機能が付けば面白そうだなと。起動させるゲームやアプリによって曲率を自動可変できれば、「モニタを手でいちいち曲げるのがめんどい」なんて事もなくなるしね。USB 伝送でいけるいける。

でも、メカニカルな可動部分は大きな故障要因やコスト上昇を招きやすいか……うーん。

 

(*1) Variable Refresh Rate(可変リフレッシュレート) : GPU がフレームバッファへの書き込み終了を待ってから V-Sync 発行やフレームバッファのフリップを行えるようにする可変Vブランキング技術。自ずとタイミング可変 V-Sync とも言える適応的な垂直同期制御ができることから、Adaptive-Sync という名称で VRR は日の目を浴びた。これにより、描画バッファへの書き込み終了が表示への切り換えタイミング(フレームバッファの V-Sync フリップ)に間に合わないケースで起こる表示フレームのドロップ現象「スタッタリング」を抑制する。AMD の FreeSync、NVIDIA の G-Sync といったプロモーション上の呼称は、いずれも VRR 部分の実装において Adaptive-Sync がベース技術となっている。なお、Qualcomm も一部の Snapdragon SoC に Q-Sync という呼称で実装しており、VRR の基礎的な仕組みはそれらと同じだと考えられる。

 

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