BT.709対応・レベル制限解除・物理キー操作など大幅に機能強化
昨日リリースされたPS Vitaシステムソフトウェアv1.80にて、AVC(H.264)動画がBT.709対応になりました(昨日お昼の呟き)。要は VUI を見てくれるようになったため、BT.601、BT.709 いずれにおても指定されたカラーマトリクスによる色空間変換を実行してくれます。

↑BT.601カラーマトリクスによるYUV変換・エンコード(smpte170m指定)した映像。これはv1.69までと同様、正常に表示される。
↑BT.709カラーマトリクスによるYUV変換・エンコードした映像(bt709指定)。システムソフトウェアv1.69まではBT.601固定だったため正しく色空間変換できず、このチェック映像の例では緑が飽和して「PS Vita」の文字が見えなくなっていた。しかし、v1.80ではこのとおり正常に表示される。

また、ProfileレベルもHigh@3.1縛りが解除され、完全にレベル制限が無くなりました(最大レベルであるHigh@5.2を意図的に指定しても大丈夫)。しかし、実質的なデコード能力はLevel 4.x程度であるため、最大ビットレートや参照フレーム数の指定には注意が必要です(下記の表を参照)。

前バージョンまでの詳細(仕様や問題点等)はこちらの過去記事でご覧いただけます。


システムソフトウェアv1.69までとv1.80のAVC(H.264)デコード仕様比較

 
Version 1.69 まで
Version 1.8
Level
3.1
制限無し(5.2でも可だがソニーの発表上では4.0)
High Profile
対応
High10 Profile
非対応
解像度
1280x720(最大)
←(現在はフルHDも可)
DPBマクロブロック数
39,600以上(18,000)*2
最大フレームレート
60fps(30fps)*2
60fps
可変フレームレート(VFR)
対応
参照フレーム数(*1)
1280x720で11(5)*1 960x540以下で16(8)*1
Bフレーム連続数
16
最大ビットレート(映像)
約40Mbps(17.5Mbps)*1
約62.5Mbps
最大ビットレート(音声)
AAC 256kbps
AAC 256kbps(*3)または512kbps以上(*4)
ピラミッド参照化
対応
OpenGOP
対応
フルレンジ判定
非対応
デインタレース再生
対応
カラーマトリクス
BT.601(固定)
BT.601およびBT.709両対応

*1 参照フレーム数 = 最大DPBマクロブロック数/(横マクロブロック数*縦マクロブロック数) #1マクロブロックサイズは16x16
*2 括弧内は Level3.1本来のリミット値
*3 MP4Boxを使用した場合の上限
*4 L-SMASH muxer/remuxer(x264_L-SMASH含む)を使用した場合に限り音声256kbps以上のVita対応動画を作成可能

  • x264での指定例
  • x264 --level 4.1 --crf xx --vbv-maxrate 17500 --vbv-bufsize 17500 --colormatrix bt.709 -o "out_video.mp4" "in_video"

    今後は、現在主流であるBT.709をVitaでも扱えるようになり、今どきの映像コンテンツとの相性が格段に良くなります。昔の映像(BT.601、smpte170mベースでマスタリングされた映像)はBT.601指定、近年の映像はBT.709をエンコード時に指定するだけで正しい色が再現されるようになりました。映像やゲーム内動画を製作される方も、BT.709変換によるBT.709指定でクリエイターが意図した色を視聴者・ゲーマーに届けることができます。

    また、早戻し/早送り・リピート・可変速再生への対応、十字キー・アナログスティック・○△□×ボタンでの操作も可能となり、キーに慣れた人であれば快適にコントロールできるよう改良されました。映像を観るとき、パネルに指紋が付かず喜ばれそうです。


    v1.80で導入されたVitaのキー操作

  • 十字キー and 左スティック
  • 項目の移動(全般)
    上・下でシーンサーチ間隔の変更(プレイヤのシーンサーチ)

  • ○ボタン
  • 決定(全般)
    一時停止⇔再生(プレイヤ)

  • △ボタン
  • コピー・削除へのショートカット(ファイルリスト)
    操作メニュー・ウインドウのON/OFF(プレイヤ)

  • □ボタン
  • ファイルリストを名前⇔日付でソート(ファイルリスト)
    シーンサーチのON/OFF(プレイヤ)

  • ×ボタン
  • キャンセル/前の項目へ戻る(全般)
    動画再生の中断(プレイヤ)
    アプリケーションのタスクを閉じる(×ボタン長押し)

    今回のアップデートにより、ようやくPS Vitaが本気を出し始めたかなという印象ですが、欲をいえば本体発売時点でこうあってほしかった……という思いも(とはいえ発売して1年も経っていないのですが)。あとは、ゲームを中心としたVita専用アプリケーションが今以上に潤ってくれることを祈るのみ。ミクさんも降臨間近ですしね。

    # 記事内の不明な点やご指摘はコメントにてどうぞ。

    リンク
    PlayStation®Vita | プレイステーション® オフィシャルサイト
    PlayStation®Vita システムソフトウェア アップデート
    PlayStation®Vita 我が青春・ダウンロード 600タイトル以上!
    PS Vita の AVC(H.264)デコード能力と仕様(v1.50) 過去記事

    1件のコメント

    1. POPさんこんにちは。
      1.8アップデートしたがBT.709でエンコードした動画を再生したら、音ズレが起こりました。
      PCでは同じ動画が問題なく再生されます。
      BT.709だけをBT.601に変えてエンコードしたら音ズレが起こりません.
      POPさんのところでは同様な事態がありましたか?
      ちなみにこれは例の動画:
      http://www.mediafire.com/download.php?o8elgbt0jagllv4

      ron
    2. > ron さん

      当方の環境で作成したものについては、音ズレが発生することはありませんでした。どういったソースをどう処理して何を使って作成したのかがわからないと、私の環境で再現チェックが出来ないため、何ともいえない状況です。

      よろしければ、それらの情報・詳細をお知らせいただけないでしょうか。

      個人的には、色空間変換時に適用するカラーマトリクスの違いでしかないため、音ズレが発生するとは考えにくいな……という印象です。もちろん何らかの不具合の可能性を否定するものでもありませんが。

      POP
    3. POPさんこんにちは。
      色々テストしたらなんとか解決しました。
      720p 60fps、BT.709でエンコードするとき、b_pyramid 0、ref 2、bframes 2では音ズレがもう起こっていません。
      720p 60fps、b_pyramid 2、ref 4、bframes 4のとき、BT.601は無事でBT.709が音ズレ、これはなぜでしょうか…

      ron
    4. > ronさん

      その動画は –vbv-maxrate 17500 –vbv-bufsize 17500 のような例でビットレート制限をしていますでしょうか。また、b_pyramid の指定が整数なのでffmpegとかなのかな?

      POP
    5. 対応しましたね。フルHDまでいけます。

      じつはHi10も転送できるようになったのですが本体では非対応ファイル判定。

      POP
    6. 1920×1080 23.976pで確認したところ、きちんと再生されました。ですが、加速再生には対応していないみたいですね。減速は問題なくできますが。
      参照フレーム数の縛りはまだあるのか判りませんが、非対応な動画はまだありますね。

      Puyo
    7. 自分でエンコードしたPSVitaで見れないファイル(MP4Boxで作った)をL-SMASHでRemuxしたら再生できたのですが、どういうことでしょうか?

      nok

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